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【報告】栗の収穫・運搬ロボットに係る専門家勉強会を開催しました。

2023.06.08

栗の収穫・運搬ロボットに係る各分野の専門家の方々からお話をいただき、オンライン勉強会を開催しました。

 

開催日時:2023年3月16日(木)

開催形式:Zoom

講師:立命館大学食マネジメント学部准教授 野中朋美氏

宮崎大学農学部准教授 槐島芳徳氏

熊本県立大学総合管理学部教授 望月信幸氏

熊本県立大学環境共生学部准教授 佐藤 哲氏

鹿児島大学農学部准教授 髙山耕二氏

コーディネーター:熊本県立大学環境共生学部教授 松添直隆

 

【概要】

「本事業の内容説明」 / 熊本県立大学環境共生学部教授 松添直隆

栗の従事者は、高齢化や減少が現実化しており、作業の省力化・軽労化が産地維持にとって待ったなしとなっている。中でも、終日樹園地を回り、地面に落下したイガ果から屈んで果実を拾い出すという、特有の収穫作業は辛いものであり、省力化・機械化が求められている。

栗の10a当たりの作業時間は53hで、そのうちの24h(約45%)が収穫・選別・出荷であり、その殆どを収穫作業が占めている。慣行的な収穫作業は手作業で、落ちた栗を屈んで火はさみやトングを使って一つずつ拾ったり、イガ果を足で踏んで開き栗を出して拾う方法であり、従事者にとって辛いものとなっている。

また、収穫期は、品種・産地により異なるが、暑い8月中旬頃から始まり、9月、10月が旬となっている。栗は傷みやすい果実で、落果してから2~3日で腐ってしまうため、毎日早朝からの収穫が必要となる。特に、高値で取引される8月中旬から収穫される極早生品種では、昼間の高温や収穫遅れから品質が悪化し、廃棄されることもある。さらに、栗は24時間落果するため、イノシシの食害にあわないよう、最盛期には早朝から夕方まで拾う必要もある。なお、中山間地域での栗のイノシシの被害は1割以上と言われている。

今回の勉強会では、各専門家から、本事業に関する意見を頂くことにした。

 

「ロボットの導入により人の仕事はどうなるか」 生産システム工学 / 立命館大学食マネジメント学部准教授 野中朋美氏

専門は生産システム工学やサービス工学。食のサービス現場にロボットを導入した場合の研究をしている。

現場に機械やAIが導入された場合に、仕事の棲み分けは、自動化できる部分を機械に任せる、人と機械がそれぞれ得意とする仕事に役割分担を切り分ける、役割分担を固定化せずに人同士のチームワークのような人と機械の柔軟な協調を目指す方針[E. Hollnagel, et al., 2016]が提案されている。マネジメントにあたっては、効率性のみならず職務充実を考慮した人・機械共創が望まれる。

職務拡大は単純な担当業務の追加などにとどまるが、職務充実では責任や権限の範囲が拡大する。これは従業員の成長実感や達成感につながるもので、モチベーション向上において重要な要素となる。ロボット導入に伴う外的要因・内的要因の変化において、裁量を広げる、成果や達成感を感じることにつながるような職務の変化ができると望ましい。

ロボット導入において、単純作業や繰り返し作業をロボットが代替する場合には、人間がより頭を使う作業が増え疲労の感じ方が変わること、休憩のとり方を工夫する事例や、スキル獲得や技能向上の計画が変わる例が見受けられる。ロボット導入により求められる役割が変化する中で、権限や責任の範囲拡大による職務充実を図りながら、いかに動機付け要因を職務設計に組み込むことができるか、働きがいを実現する「人と機械、人同士の新たな協業の形」を考えることが必要であると考える。

 

「スマート農業機械の製作について」 農業機械学 / 宮崎大学農学部准教授 槐島芳徳氏

農学部の中でも農業機械、農業施設、情報関係を教えている。釜炒り茶の高品質生産システムの開発に関する研究を行っている。

スマート農業機械とは農業機械+センサ+コンピュータ。考え、判断し、作業を支援する機械。センサは五感に相当し位置情報もある。また、コンピュータは通信機能装備やセンサ制御、AIやGISなどのアプリの活用などの役割がある。スマート農業機械を作るためには農業機械の選定、センサの選定、農業機械・センサの通信に関する選定、外部との通信に関する選定、判断プログラムの選定がある。

栗の収穫について調べてみたが、アメリカでは手押し型栗収穫機(ブラシで挟み込んで収穫)や吸い込み型の背負い式栗収穫機、大型のトラクタ牽引型栗収穫機があり、イタリアには自走式栗収穫機もある。日本でもアトラックラボで栗収穫機が開発されているが、市販化されていない。

もし自分が栗収穫機を開発する立場にあれば、業務用スイーパーや乗用型芝刈り機を参考に考える。集荷ステーションは栗イガ剥き機との連携も必要。センサでは光走査式距離センサと重量センサで収量マップの作製が可能。距離センサを使うのであれば葉の疎密の状態がわかるので落葉を伴う病気の判断にもつかえるのではないか。収穫ネットの利用で落ちる場所を限定することも考えると面白い。

まとめとして、栗収穫機後部はオリジナルで面白い、また荷台部はアタッチメント化の拡大と草刈り装置等が装備されればなお良い。

 

「ロボット製造・販売について」 会計学 / 熊本県立大学総合管理学部教授 望月信幸氏

栗ロボの費用対効果について会計学の視点で話をする。

費用対効果は費用と効果を秤にかけ、効果が高い方がいい。費用は金額での算定ができるが、効果を金額算定することが難しい。また、時間概念も加え、どの程度の時間で回収するか長期的視点で考えないといけない。

費用対効果を考えるとき、費用の部分は開発コスト、製造コスト、ランニングコスト、廃棄コストがある。それに対し収益(効果)は収穫物の売上は算定しやすいが、コストの節約額(人件費削減額、労働軽減による損失回避額、他用途振替による収益)が算定しにくい。熊本市のスマート農業事業では当時の熊本市農水局局長から労働軽減による損失回避額を計算してほしいと依頼を受けた。作業が軽減されることでケガが回避できたなど、本来支出したであろうお金がどの程度節約できたかを検討した。サンプルが少なかったためか結論数字としては大きな変化がなく、効果が見いだせなかった。

考慮が必要な点はコスト節約額だが、直接的な影響のみを考慮せざるを得ない。

機能と時間を考え、シンプルで安いものを考えてもいい。

 

「中山間地域での栗栽培について」 農村計画学 / 熊本県立大学環境共生学部准教授 佐藤 哲氏

空き家空き地から考える農業振興について話す。

空き家には農地がセットになっていることが多い。山江村の栗を使ったまちおこしの話をする。地域おこしでスマート農業に注目することもあるが、栗栽培や加工などにたくさんの人が関わり活気を生むことも考えていると思う。

農地は次の人に伝えられればいいという意見もあるが、農地がついている空き家が宇城市では掃けなかった。農業委員会の許可や、ある程度の面積が必要ということが要因。多くの空き家バンクが家だけを紹介するものとしているが、山都町では仕事の情報を合わせて発信している。

山江村では農林業の占める割合が大きいが、担い手確保や高齢者不足、耕作放棄地の解消が進まないという問題がある。やまえ堂では栗園を丸々管理する求人を出している。スマート農業で農業が効率化されても移住者の住まいがないと難しい。山江村はケーブルテレビがあり、栗を使った地域おこしをしたいという気持ちもある。ただ、栗を使った製品開発をする人を呼び込むとなると、現状は空き家バンクの登録数が少ない。また賃貸物件もない。今後農業を振興して人を集めるためには住まいが必要である。

 

「栗の鳥獣被害対策について」 動物行動学 / 鹿児島大学農学部准教授 髙山耕二氏

農作物に対する鳥獣被害対策の話をする。

農地にはイノシシやシカ、テン、たぬきなどの害獣が来る。全国各地で農業をするためには電気柵などなんらかの対策が不可欠。

栗園を餌場として認識させないことが重要。栗収穫ロボがあると餌がなくなり、餌場としての魅力がなくなる、またロボットが動き回ることでイノシシの警戒心をあおり、圃場への接近を躊躇させる効果も期待できる。

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