【報告】令和4年度熊本県内の生産者アンケート結果を報告します。(熊本県立大学)
2023.08.16
ロボットの導入による経済性評価を実施するにあたり、栗農家の経営面積、生産者一戸あたりの経済状況を把握するために、令和4年度に熊本県の栗農家を対象としてアンケートを実施しました。その調査結果について報告いたします。
研究内容
普及・実用化支援機関である、山江村の生産者並びにJAたまなを中心に調査し、熊本以外の栗園の状況も確認する。
具体的成果
公益財団法人地方経済総合研究所とともにアンケート調査票を作成。熊本県鹿本地域の栗部会(12月14日)、JAたまなの栗生産者(12月21日)に対して、経営関係についてのアンケートを実施した。なお、熊本以外の栗園の状況については茨城県(2カ所)、愛媛県(1カ所)で視察をおこない、聞き取り調査した(参照:令和4年度の研究成果《視察》)
アンケート調査票(PDF:アンケート_R4年度)
集計結果
問1 あなたの年齢を教えてください。
「70代」:50.5%、
「60代」:31.3%
60~70代で全体の8割を占めた。
問2 あなたの栗園の圃場の特徴について、あてはまるものに1つ〇印を付けてください。
「主に平坦地」:93.3%
「主に傾斜地(緩傾斜)」:6.7%
「主に傾斜地(急傾斜)」の回答は無かった。
問3 あなたの栗園の経営規模について、あてはまるものに1つ〇印を付けてください。
「50a未満」:40.0%
「50a~1ha」:26.7%
「1ha~3ha」:26.7%
「3ha以上」:6.7%
問4 あなたの経営体(または所属している経営体)の直近1年間の栗の農業粗収益(販売額)はおよそどれくらいでしたか。あてはまるものに1つ○印を付けてください。
「50万円未満」:37.5%
「100万円~200万円」:31.3%
「50万円~100万円」:12.5%
「200万円~300万円」:12.5%
「300万円以上」:6.3%
問5 あなたの経営(または所属している経営体の経営)の販売先についてあてはまるものすべてに〇印を付けてください。また、おおよその販売割合についても記載をお願いします。
「JA」と回答した人が最も多く14人であった。
問6 あなたが栗の収穫・運搬ロボットに求める機能や仕様についてあてはまるもの全てに〇印を付けてください。また、その他に求める機構があれば記載をお願いします。
「イガ付・イガ無し栗を確実に収穫できる」:11人
「軽トラで運搬できる程度に軽量」:7人
「イガ付・イガ無し栗を収穫時に選別できる」:6人
「緩やかな傾斜地や凸凹の地面を安定的に走行できる」:5人
「シンプルな構造で手入れが簡単」:4人
「収穫した栗は指定した場所に運搬・集荷できる」:2人
「電池が取り外し可能で充電が容易」:2人
「盗難防止のためのGPS機能等が搭載されている」:2人
「その他」:1人
その他に求める機構としては「収穫幅をもっと広く、実だけの収穫もできるように」という回答があった。
問7 もし問6で選択した機構が搭載された栗の収穫・運搬ロボットが販売された場合、あなたはどのくらいの金額であれば購入を検討しますか。あてはまるものに1つ○印を付けてください。また、その金額を選択した理由があれば記載をお願いします。
「30~50万円」:73.3%
「50~70万円」:20.0%
「70~100万円」:6.7%
また、その金額を選択した理由について「もっと安く10万円位」や「経営面積での栗での収益の1年分に収めないと購入がむずかしい」という声があった。
問8 あなたの栗の栽培方法についてお困りのことすべてに○印を付けてください。また、栽培・収穫方法で必要な機械があれば記載をお願いします。
「収穫」:9人
「剪定」:8人
「除草」:5人
「施肥」:2人
「毬剥き」:2人
栽培・収穫方法で必要な機械について「イガを粉砕し堆肥化する」という回答があった。
問9 あなたは栗園の除草を年に何回実施していますか。あてはまるものに1つ○印を付けてください。
「3回」:43.8%
「4回」:25.0%
「5回以上」:18.8%
問10 あなたの栗園での収穫作業についてお尋ねします。
(1)収穫は年に何日実施していますか。おおよその日数を数字でお書きください。
「60日程度」:56.3%
「30日程度」:12.5%
「10日程度」:(最短)6.3%
「90日程度」:(最長)6.3%
(2)収穫は1日当たり何時間程度実施していますか。おおよその時間を数字でお書きください。
「4時間程度」:31.3%
「5時間程度」:25.0%
「3時間程度」(最短)~「6時間程度」(最長)までの回答があった。
(3)収穫は1日当たり何人程度で実施していますか。おおよその人数を数字でお書きください。
「2人程度」:62.5%
「3人程度」:12.5%
「4人程度」:12.5%
「1人程度」(最低)~「7人程度」(最高)までの回答があった。
問11 あなたは今後、栗園の規模拡大を予定していますか。あてはまるものに1つ○印を付けてください
「予定していない」:43.8%
「条件が整えば、拡大したい」:31.3%
「予定している」:18.8%
「わからない」:6.3%
問11 問10で「3.予定していない」を選択された方にお聞きします。あなたが、栗園の規模拡大を予定していない理由について、あてはまるものに1つ○印を付けてください。また、その他に規模拡大をしない理由があれば記載をお願いします。
「後継者がいない」:71.4%
「台風などの被害が心配」:14.3%
考察
栗園の面積は1ha以上33%、栗園の拡大について考えている(条件が整えば並びに予定している)が約50%であり、条件次第であるが規模拡大の可能性は高いと考える。また、熊本県内の栗の生産地(山鹿地域のヒアリング)では、平場に栗園が増えている。一方、栗の栽培方法でお困りのことについて、「収穫」が最も多かった。したがって、規模拡大の障壁は、栗の収穫の人手がないこと(茨城のヒアリングでも同じ)、台風の影響が大きいこと(熊本県山江村でのヒアリング)と考える。栗の収穫・運搬ロボットについて、求める機能や仕様は「イガ付・イガ無し栗を確実に収穫できる」、購入検討額は「30~50万円」であった。これらを満足する収穫・運搬ロボットの開発により、栗園の拡大は進むと考えられた。